先代旧事本紀大成経
先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんきたいせいきょう、先代舊事本紀大成經)は、聖徳太子によって編纂されたと伝えられる教典。複数の研究者によって偽書とされている[1][2]。
内容[編集]
正部三十八巻と副部三十四巻の計七十二巻に分かれている。正部には神代七代から推古天皇までの歴史と祭祀、副部には卜占・歴制・医学・予言・憲法など広範な内容が記され、神道の教典としての格を備えている。
正部[編集]
神代本紀[編集]
全一巻。
先天本紀[編集]
全一巻。
陰陽本紀[編集]
全一巻。
黄泉本紀[編集]
全一巻。
神祇本紀[編集]
上下二巻。
神事本紀[編集]
上下二巻。
天神本紀[編集]
上下二巻。
地祇本紀[編集]
上下二巻。
皇孫本紀[編集]
上下二巻。
天孫本紀[編集]
上下二巻。
神皇本紀[編集]
全六巻。
天皇本紀[編集]
全六巻。
帝皇本紀[編集]
全六巻。
聖皇本紀[編集]
全四巻。
副部[編集]
經教本紀[編集]
全六巻。
祝言本紀[編集]
全一巻。
天政本紀[編集]
全一巻。
太占本紀[編集]
上下二巻。
歴道本紀[編集]
全四巻。
醫綱本紀[編集]
全四巻。
禮綱本紀[編集]
全四巻。
詠歌本紀[編集]
上下二巻。
御語本紀[編集]
全四巻。
軍旅本紀[編集]
上下二巻。
未然本紀[編集]
全一巻。
憲法本紀[編集]
全一巻。
神社本紀[編集]
全一巻。
國造本紀[編集]
全一巻。
先代旧事本紀大成経事件[編集]
1679年(延宝7年)、江戸の書店で『先代旧事本紀大成経』(七十二巻本)[注 1]と呼ばれる書物が発見されたとされた[注 2]。この大成経の内容が公開されると大きな話題となり、学者や神職、僧侶の間で広く読まれるようになった。しかし、大成経の内容は伊勢神宮別宮の伊雑宮の神職が主張していた「伊雑宮が日神を祀る社であり、内宮・外宮は星神・月神を祀るものである」という説を裏づけるようなものであることがわかり[注 3]、内宮・外宮の神職がこの書の内容について幕府に詮議を求めた。
1681年(天和元年)、幕府は大成経を偽書と断定し、江戸の版元「戸嶋惣兵衛」、書店にこの書物を持ち込んだ神道家・永野采女と僧 ・潮音道海(ちょうおんどうかい、1628年-95年)[注 4]、偽作を依頼したとされた伊雑宮の神職らを処罰した。後に大成経を始めとする由緒の明らかでない書物の出版・販売が禁止された。しかし、幕府の目を掻い潜って大成経は出回り続け、垂加神道などに影響を与えている。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 本項目で解説した書は「延宝版」、「潮音本」、「七十二巻本」などと呼ばれることがある。『鷦鷯(ささき、さざき)伝本先代旧事本紀大成経(大成経鷦鷯伝)』(三十一巻本、1670年(寛文10年)刊)及び『白河本旧事紀』(伯家伝、三十巻本)は異本。すべて『先代旧事本紀』を基にして江戸時代に創作されたと言われている。後に多数現れる「古史古伝」のルーツ、種本とみる人もいる。
- ^ 1675年(延宝3年)、江戸の版元「戸嶋惣兵衛」より『聖徳太子五憲法』と称する書物が刊行された。この書物は聖徳太子の憲法は「通蒙憲法」「政家憲法」「儒士憲法」「釈氏憲法」「神職憲法」の五憲法であり、「通蒙憲法」が日本書紀の十七条憲法であるとする。1679年(延宝7年)に現れた『先代旧事本紀大成経』巻七十「憲法本紀」は1675年(延宝3年)の『聖徳太子五憲法』と同じ内容である。
- ^ 皇大神宮と伊雑宮は奉斎氏族が別であり、日神祭祀の起源主張には無理がある。
- ^ 黄檗宗の僧。著書に『摧邪輪』『坐禅論』『霧海南針』などがある。
出典[編集]
関連文献[編集]
書籍[編集]
- 『先代舊事本紀大成経』全9巻 須藤太幹解読 先代舊事本紀研究会 2001年(平成13年)
- 安本美典 (編集) 『奇書『先代旧事本紀』の謎をさぐる』付編「 偽書『先代旧事本紀大成経』事件(もう一つの『先代旧事本紀』?―『大成経』偽書事件)」 批評社 2007年
- 今田洋三『江戸の禁書』 吉川弘文館 2007年
- 後藤隆『謎の根元聖典 先代旧事本紀大成経』 徳間書店 2004年, ヒカルランド 2017年(新装版)
- 藤原明『日本の偽書』 文藝春秋 2004年
- 野澤政直『禁書 聖徳太子五憲法』 新人物往来社 2005年
- 小川龍『高僧 道海と消された経典』 幻冬舎 2007年(小説)
雑誌掲載論文[編集]
- 佐藤俊晃「近世仏教者の神国意識 : 『近代旧事本紀大成経』と徳翁良高著の『神秘壷中天』」(印度学仏教学研究, 97 (49-1))
- 佐藤俊晃「潮音道海の神国意識: 『先代旧事本紀大成経』との出逢い前後」 (印度学仏教学研究, 100 (50-2))
- 湯浅佳子「『先代旧事本紀大成経』の「帝皇本紀」: 聖徳太子関連記事を中心に」 (東京学芸大学紀要: 第2部門 人文科学, 49)
- 湯浅佳子「『先代旧事本紀大成経』の「神代皇代大成経序」」 (東京学芸大学紀要: 第2部門 人文科学, 50)
- 岩田貞雄「〈皇大神宮別宮〉伊雑宮謀計事件の真相 : 偽書成立の原由について」 (國學院大學日本文化研究所紀要:33、 1974年3月)
- 古田紹欽 「徳翁良高に於ける宗弊改革思想の淵源 ―黄檗潮音道海との関係―」 『大倉山論集』2
- 古田紹欽「潮音道海の神道思想」神道宗教 75
- 湯浅佳子「増穂残口の神道説 : 『先代旧事本紀大成経』との関りを中心に」『日本文学 47(6)』、日本文学協会、1996年6月。
- 湯浅佳子「聖徳太子と瓢箪 : 『先代旧事本紀大成経』から『聖徳太子伝図会』へ」『日本文学 47(8)』、日本文学協会、1998年8月。
- 佐藤俊晃「近世仏教者の神国意識-『先代旧事本紀大成経』と徳翁良高著『神秘壼中天』-」『印度學佛教學研究 49(1)』、JAPANESE ASSOCIATION OF INDIAN AND BUDDHIST STUDIES、2000年。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 先代舊事本紀大成經
- 偽史・偽書の世界 - ウェイバックマシン(1999年8月27日アーカイブ分)
- 『先代旧事本紀』と『大成経』
- 伊雑宮偽書事件顛末記 - ウェイバックマシン(1999年8月28日アーカイブ分)