User:Samirabiem/sandbox

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デング熱
Photograph of a person's back with the skin exhibiting the characteristic rash of dengue fever
デング熱で見られる典型的な発疹
Classification and external resources
ICD-10 A90
ICD-9-CM 061
DiseasesDB 3564
MedlinePlus 001374
eMedicine med/528
MeSH C02.782.417.214

ウキペディア-フリー百科事典

その他、デング熱(曖昧さ回避のページ)もご覧下さい。

デング熱 Dengue fever (デングねつ イギリス/ˈdɛŋɡ/ または アメリカ /ˈdɛŋɡ/)は、breakbone feverでも知られるデングウイルスが原因の感染症熱帯病である。「テング熱」、あるいは当て字して「天狗熱」と記されることがあるが、これらは誤りである。英語での発音は「デング」ではなく「デンギ」もしくは「デンゲイ」で、日本語でもまれにデンゲ熱と呼ぶ。症状には、発熱頭痛筋肉痛関節痛はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。稀ではあるが、生命を脅かすデング出血熱に発展し、出血、 血小板の減少または血漿(けっしょう)漏出を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して危険な血圧低下を引き起こす場合がある。

デング熱は、ヤブカの中でも特にネッタイシマカ(A. aegypti)に属するいくつかのの種によって媒介される。このウイルスには4つの異なる型があり、例えば1つの型にかかった場合、通常その型に対しては終生免疫を獲得するが、他の型に対する免疫は、短期間だけである。また、異なる型に続けて感染した場合、重度の合併症のリスクが増える。ワクチンがないので、予防策は、蚊の生息地や数を減らし、刺されないようにすることである。

急性デング熱の治療は支持的で、軽度または中等度であれば、経口もしくは点滴による 水分補給 、より重度の場合は、 点滴剤投与 や 輸血といった治療がある。デング熱の 発生数は 1960年代より急激に増加していて、毎年およそ5,000万から1億人が感染している。デング熱に関する記述が見られるようになったのは1779年のことで、ウイルスの原因や伝染について解明されたのは、20世紀初頭である。 第二次世界大戦以降、デング熱は世界的な問題となり、110ヶ国以上で流行している。その対策として、蚊の駆除の他に、ワクチンの研究やウイルスに直接働きかける薬物治療の研究が進められている。


徴候と症状[edit]

デング熱の症状を示す略図
Symptoms of Dengue fever = デング熱の症状
Febrile phase = 発熱段階
sudden-onset fever = 突然の発熱
Headache = 頭痛
Mouth and nose bleeding = 口や鼻からの出血
Muscle and joint pains = 筋肉や関節の痛み
Vomiting = 嘔吐
Rash = 発疹
Diarrhea = 下痢
Critical phase = 重症段階
Hypotension = 低血圧症
Pleural effusion ascites = 胸腹水症
Gastrointestinal bleeding = 消化管出血
Recovery phase = 回復段階
altered level of consciousness = 意識レベルの変化
seizures = 発作
Itching = かゆみ
Slow heart rate = 心拍の遅れ

デングウイルスに感染すると、無症候性(80%)または軽度の症状、例えば合併症を伴わない発熱症状が現れるだけの場合がほとんどである。[1][2][3] しかし中にはさらに重症にまで発展し(5%)、ごく一部ではあるが、生命を脅かす場合もある。[1][3] 潜伏期間 (感染してから症状が出るまでの期間)は3~14日であるが、ほとんどの場合は4~7日である。[4] このため、デング熱の流行地域から戻ってきた旅行者が、帰宅してから14日以上経った後で、発熱やその他の症状が出始めた場合、デング熱である可能性は極めて低い。[5] また子供がかかると、風邪 や胃腸炎(嘔吐や下痢)とよく似た症状がたびたび現れ、[6] 重症に至る可能性は、一般的に大人よりも少ないが、[7] 重度の合併症になりやすい。[5][7]

臨床経過[edit]

デング熱の臨床経過[8]
Days of illness = 病気の経過日数
Temperature = 体温
Potential clinical issues = 可能性のある臨床問題
Laboratory changes = 臨床的変化
Serology and virology = 血清学とウイルス学
Phases of illness = 疾患段階
Febrile = 発熱
Critical = 重症
Recover = 回復
dehydration = 脱水症状
Hematocrit = ヘマトクリット値
Viraemia = ウイルス血症
shock = ショック
bleeding = 出血
organ impairment = 臓器障害
readsorption = 再吸収
fluid overload = 水分過負荷
Platelets = 血小板
IgG/IgH = 免疫グロブリンG/免疫グロブリンH

デング熱の症状の特徴は、突然の発熱、頭痛(一般的に目の奥の痛み)、筋肉や関節の痛み、発疹である。英語で別名「break-bone fever」と呼ばれているが、デング熱に伴う筋肉や関節の痛みが由来している。[1][9] 感染には、発熱、重症、回復の3段階がある。[8]

発熱期には、40℃(104゜F)以上の高熱が出ることがよくあり、全身の痛みや頭痛を伴う。通常、このような症状が2~7日続く。[9][8] この段階で発疹の症状が現れるのは、50~80%である。[9][10] 発疹は、1日目または2日目に皮膚が赤くなる症状が現れるか、さらに疾患段階が経過した後(4~7日)に、 はしかに似た 発疹が現れる。[10][11] またこの時点で、点状出血 (皮膚を押したときに消えないまま残る小さな赤色の点で、毛細血管の破綻が原因)がいくつか現れ、[8] 口や鼻の粘膜 から軽度の出血がある場合もある。 [5][9] 一般に、発熱自体は1日か2日の間で急に熱が上がって下がるといった、本質的に二相性のものであるが、実際には、様々な頻度でこの二相性発熱が発生する。[11][12]

しかし、中には重症に発展する人もいる。重症は、高熱から回復した後で発症し、通常1~2日続く。[8] この段階で、毛細血管透過性が増し、水分の漏れが増加することで、胸腔腹腔に多量の水分が溜まる場合がある。これにより、循環する水分が著しく減少 したり、主要な臓器へ送られる血液が減少する。[8] またこの段階では、臓器障害や大量出血が、一般的に消化器管から起こることがある。[5][8] ショック (デングショック症候群)や出血(デング出血熱)が発症する割合は、全症例の5%未満であるが、[5] 以前に他の血清型 のデングウイルスに感染したことがある場合(二次感染)は、そのリスクが増える。[5][13]

回復期には、血流に漏れた水分を再び吸収しながら、次の症状が現れる。[8] 通常2、3日続く。[5] 回復は目覚しいが、激しいかゆみ が発生したり、心拍が遅くなることがよくある。[5][8] 斑丘疹または血管炎症候群といった別の発疹が現れ、皮膚が剥けてくる可能性がある。[7] この段階で、水分過負荷状態になることがあり、これが脳に影響すると、意識レベル低下や 癲癇を引き起こす。[5] 数週間、 疲労感が続く。[7]

付随する問題[edit]

デング熱は、その他の人体構造に影響を与える場合がある。[8] それは、単独の症状で現れることもあれば、典型的なデング熱の症状と共に現れる場合もある。[6] 意識レベルの低下は、重症例の0.5~6%で発生し、脳のウイルス感染が原因、もしくは肝臓などの重要な臓器の障害が間接的な起因となる。[6][12]

その他の神経疾患については、横断性脊髄炎 やギラン・バレー症候群などのデング熱のコンテキストの中で報告されている。[6] 心臓への感染急性肝不全は、稀に起こる合併症の一つである。 [5][8]

原因[edit]

ウイルス学[edit]

メイン記事: デングウイルス

A transmission electron microscopy image showing dengue virus
透過型電子顕微鏡(TEM)による 顕微鏡写真図 が示すデングウイルスビリオン (中央付近に密集している黒点の数々)

デングウイルス(DENV)は、フラビウイルス科フラビウイルス属のRNAウイルスである。同じ属に、黄熱病ウイルスウエストナイルウイルス、 セントルイス脳炎ウイルス、 日本脳炎ウイルスダニ媒介性脳炎ウイルスキャサヌール森林病ウイルス、 オムスク出血熱ウイルスがある。[12] これらのほとんどは、節足動物(蚊やダニ)が媒介しているため、 アルボウイルス (節足動物媒介性ウイルス)とも呼ばれている。[12]

デングウイルスゲノム(遺伝物質)には、約11,000の ヌクレオチド塩基がある。ヌクレオチド塩基は、3種類の異なるタンパク質分子(C、prM、E)のためのコードで、ウイルス粒子や他の7種類のタンパク質分子(NS1、NS2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、NS5)を形成する。これらは、感染した宿主細胞にのみ見られ、ウイルスの複製に必要となる。[13][14] また、血清型と呼ばれる4つのウイルス株があり、DENV-1、DENV-2、 DENV-3 、 DENV-4と表記される。[2] これらの4つの血清型はすべて、あらゆる範囲の疾患を引き起こす可能性がある。[13] 例えば、1つの血清型で感染した場合、その血清型の終生免疫を獲得するが、他の血清型に対しては、短期間のみ免疫がある。[2][9]

二次感染で重度の合併症が特に起こりやすいのは、以前血清型DENV-1にかかった人が、血清型DENV-2または血清型DENV-3 にかかる場合や、以前血清型DENV-3 にかかった人が、血清型DENV-2にかかる場合である。[14]

媒介[edit]

Close-up photograph of an Aedes aegypti mosquito biting human skin
栄養源であるヒトに吸い付くネッタイシマカの蚊

デングウイルスは、主に ヤブカの中でも特にネッタイシマカの蚊によって媒介される。[2] これらの蚊は通常、北35°から南緯35°の間、 標高1,000メートル(3,300フィート)以下の所に生息している。[2] 主に日中に刺す。[15] 病気を媒介するヤブカの種には、他にヒトスジシマカ、 ポリネシアヤブカ 、 スクテラリスシマカがある。[2] ウイルスは、主にヒトを宿主とするが、[2][12] ヒト以外のサル目にも集まる。[16] たったひと噛みで感染し得る。[17] デング熱に感染した人から吸血するメスの蚊は、腸の内側を覆う細胞にウイルスを感染する。およそ8~10日後、そのウイルスは他の組織に広がり、蚊の唾液腺にまで及んで、唾液中に放出される。蚊はウイルスから有害な影響を受けることなく、生涯感染した状態でいるようだ。ネッタイシマカは、好んで人工の水の容器に卵を産み付けるため、ヒトの近くに住み着き、他の脊椎動物よりも人に吸い付く。[18]

デング熱は、感染した血液製剤臓器提供によっても媒介される。[19][20] シンガポールなどの国々でデング熱が流行していて、そのリスクは、10,000の輸血のうち1.6~6と言われる。[21] また、妊娠中もしくは出産時の垂直感染(母親から子供へ)が、報告されている。[22] その他、人から人への感染も報告されているが、稀である。[9]

傾向[edit]

重度の疾患は、乳幼児により多く見られ、多くの他の感染症とは対照的に、比較的栄養を多く摂っている子供たちの方が、なりやすい。[5] また、男性よりも女性のほうがリスクが高い。[14]  糖尿病気管支喘息など持病がある人がデング熱にかかると、命にかかわることがある。[14]

特定遺伝子 における多型(通常の変動)は、重度のデング熱合併症のリスクを高める。タンパク質コード遺伝子がその一例で、腫瘍壊死因子α (TNFα)、 マンナン結合レクチン[1] 細胞障害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)悪性化増殖因子β(TGFβ)[13] 樹状細胞特異的ICAM-3結合ノンインテグリン(DC-SIGN)ヒト白血球型抗原の特定のを含む。[14] また、アフリカで広まっているグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症と呼ばれる遺伝子疾患は、リスクを高める可能性がある。[23]  ビタミンD受容体Fc受容体の遺伝子多型は、 デング熱の二次感染で重度の疾患になるのを防ぐと言われている。[14]

メカニズム[edit]

デングウイルスを運ぶ蚊が人を刺すと、蚊の唾液と共にウイルスが皮膚に侵入する。ウイルスは、白血球と結合してその中に入り、体内を移動しながら細胞内で再生する。白血球は、インターフェロンなどの多くのシグナルタンパク質を生成しながら応答して、発熱やインフルエンザのような症状、重度の痛みなど多くの症候から人体を守る機能がある。重度の感染の場合、体内でウイルス生成が大幅に増大し、さらに多くの臓器(例えば肝臓骨髄)に影響を与え、血流から漏出した液体が、小さな血管の壁を通り体腔へと流れる。その結果、血管内で循環する血液が減少して血圧が下がるため、主要な臓器に十分な血液を送ることができなくなる。さらに、骨髄で機能障害が起こると、有効血液の凝固に必要な血小板の数が減少する。これにより、出血や他の主要なデング熱合併症のリスクが高まる。[23]

ウイルス複製[edit]

デングウイルスは皮膚に入るとすぐに、ランゲルハンス細胞 (皮膚内にある樹状細胞の集合体で、病原体を識別する)と結合する。[23] ウイルスは、ウイルスタンパク質とランゲルハンス細胞上の 膜タンパク質、特にDC-SIGNと呼ばれる C型レクチンマンノース受容体CLEC5Aとの結合を介して細胞内に入る 。[13] DC-SIGNは、樹状細胞上にある異物のための非特異的な受容体で、ここが主な進入口と見られる。[14] 樹状細胞は、最も近い リンパ節に移動する。 一方ウイルスゲノムは、細胞の小胞体上にある膜結合型小胞体で複製され、細胞のタンパク質合成組織が、新しいウイルスタンパク質を生成し、ウイルスRNAがコピーされる。未熟なウイルス粒子は、ゴルジ体へと送られる。ゴルジ体は細胞の一部で、ここでタンパク質のいくつかが、必要な糖鎖 (糖タンパク質)を受け取っている。こうして成熟した新しいウイルスは、感染した細胞の表面上で出芽して、エキソサイトーシスによって放出され、その後、単核細胞マクロファージなどの他の白血球内に侵入できるようになる。[13]

細胞は感染するとすぐに、インターフェロンや サイトカインを生成する。これらは、自然免疫系を介して、JAK-STAT経路によって媒介されるタンパク質グループの生成を大幅に増加し、ウイルス感染に対する防御を増やす。デングウイルスの血清型のいくつかに、この過程を遅くするメカニズムが見られる。また、インターフェロンは、獲得免疫系を活性化して、ウイルスに対する抗体を生成する他に、ウイルス感染した細胞すべてを直接攻撃するT細胞も生成する。[13] このようにして様々な抗体が生成される。ある抗体は、ウイルスタンパク質と密接に結合して、それらを食作用の対象にする(特殊な細胞で摂取し破壊する)。しかし、抗体はウイルスとしっかり結合しないこともあり、ウイルスを破壊しないまま食作用の一部として運び、さらに複製する場合もある。[13]

重度の疾患[edit]

詳しい情報は: 抗体依存性感染増強

なぜ人々が、異なる種類のデングウイルスに二次感染し、デング出血熱やデングショック症候群のリスクに冒されるのかは、解明されていない。最も広く受け入れられている仮説に、抗体依存性感染増強(ADE)がある。ADEの背景にある正確なメカニズムは不明である。非中和性抗体の結合が不十分なために、破壊するためにウイルスを摂取した白血球の区画内へ、誤って伝達することが原因かもしれない。[13][14] ADEの他にも、重度のデング熱に付随する合併症を引き起こすメカニズムがあると言われていて、[1] 様々な研究筋がT細胞及びサイトカイン補体などの可溶性因子の機能について暗示している。[23]

重度の疾患では、2つの問題が現れる。血管内皮(血管内に並ぶ細胞)の機能障害と血液凝固障害である。[6] 血管内皮障害は、血液が血管から胸腔や腹腔へ漏出する原因となり、血液凝固障害は、出血性合併症を引き起こす。ウイルスが血中で増加し、臓器(骨髄肝臓など)に関与することで、重度の疾患を招く。感染した臓器の細胞は死に、サイトカインの放出や、凝固系及び線溶系(血液凝固とは逆の系統の血栓分解)の活性化に至る。この結果、内皮機能障害や血液凝固障害をもたらす。[23]

診断[edit]

警戒兆候[24]
腹痛
続く嘔吐
肝腫大
粘膜出血
血小板の減少に伴う
へマトクリット値の上昇
倦怠感

デング熱の診断は一般的に、報告された症状と診察に基づいて、臨床的に行われる。これは、特に流行地域で適用されている。[1] しかし初期の疾患は、他のウイルス感染症との識別が困難なことがある。[5] 推定診断は、発熱の症状と次の中から2つの症状を確認することで行われる。吐き気や嘔吐、発疹、全身の痛み、白血球数の減少ターニケット試験で陽性の場合、または風土病 が警告されている地域に住んでいて、警戒兆候(表を参照)が見られる場合である。[24] 警戒兆候は通常、重度のデング熱が発症する前に起こる。[8] ターニケット試験は、臨床調査が不可能な状況において特に有用で、容易に行える。試験では、血圧測定用カフを5分間使用し、点状出血を数える。その数値が高いほど、デング熱である可能性が高いと診断される。[8]

熱帯または亜熱帯地域に滞在して2週間以内に発熱した場合は、診断を受ける必要がある。[7] デング熱は、チクングニア熱との識別が難しい。チクングニア熱は、デング熱とよく似たウイルス感染で、共通する症状が数多くあり、同様の地域で発症している。[9]  また、マラリアレプトスピラ症、 腸チフス細菌性髄膜炎などもデング熱と似たような症状をもたらすため、それらの状態を除外するための調査が頻繁に実施されている。[5]

臨床調査で一番早く変化が検出されるのは、白血球の減少で、続いて血小板減少代謝性アシドーシスが見られる場合が多い。[5] 重度の疾患では、血漿漏出の結果、血液濃縮 (ヘマトクリット値が上昇することで示される)や低アルブミン血症が起こる。[5] 胸水 や腹水は、診察時に胸部や腹部が膨隆していることで検出が可能であるが、[5] デングショック症候群には、超音波で流体を確認することが早期発見に役立つ。[1][5] しかし超音波は、入手が難しいため使用が制限されている場合が多い。[1]

分類[edit]

世界保健機関(WHO)は2009年、デング熱を合併症のないものと重度のものとの2種類に分類した。[1][24] 1997年のWHOの分類は、今でも幅広く使用されているが、あまりにも制約が多かったため単純化する必要が認められ、新たにこの分類が実施された。[24] 1997年の分類では、デング熱を未分化熱、デング熱、デング出血熱に分けていた。[5][25] デング出血熱は、さらにグレードI~IVに細分されていた。 グレードIは、発熱が見られて、内出血しやすい状態やターニケット試験で陽性反応が出た場合のみで、グレードIIは、特発性出血が皮膚や他の箇所で起こる場合である。グレードIIIは、臨床的にショックが認められた場合で、グレードIVは、ショックがあまりにも重度なため、血圧 や拍動が計測不可能な場合である。[25] グレードIIIとIVは、「デングショック症候群」とも呼ばれる。[24][25]

臨床検査[edit]

デング熱は、微生物学的臨床検査で診断が可能である。[24] 検査は、細胞培養によるウイルス分離、 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸検出、ウイルス抗原検出や特異抗体(血清学的)によって行われる。[14][26] ウイルス分離や核酸検出は、ウイルス抗原検出よりも正確であるが、より費用がかかるためあまり用いられていない。[26] またこれらの検査はすべて、疾患の初期段階ではあまり効果がないかもしれない。[5][14] PCRとウイルス抗原検出は、最初の7日間により正確な結果が出る。[7]  機器を使って実施でき、インフルエンザの診断にも使用されているPCR検査は、2012年に導入され、今後ますます活用されるだろう。[27]

このような臨床検査は、血清学的なものを除き、疾患の急性期に限って診断価値がある。デングウイルス特異抗体、免疫グロブリンG (IgG)型及び免疫グロブリンM(IgM)型の検査は、感染の後期において診断を確認するのに役立つ。IgG とIgMは共に、5~7日後に生成される。IgMの最高レベル(力価)は一次感染後に検出されるが、IgMは二次もしくは三次感染の段階でも生成される。またIgMは、一次感染後30~90日で検出されなくなるが、すぐに再感染が起きた場合は、検出される。対照的にIgGは、60年以上もの間検出され、症状がない場合、過去の感染の指標に有用である。IgGは、一次感染の後14~21日後に、血中でピーク値に達する。その後の再感染では、より早い段階でピークに達し、力価は通常さらに高くなる。IgG とIgMは共に、ウイルスの血清型感染に対する防御免疫を提供する。臨床検査において、IgG 及びIgM 抗体は、黄熱ウイルスなどの他のフラビウイルスと交差反応が可能なため、血清学的検査で判断が困難な場合がある。[9][14][28] 14日ごとに血液サンプルを収集し、特異的IgGのレベルが4倍以上増加したものが検出された場合を除き、IgG検出のみでは診断しない。症状が見られる場合は、IgM検出で診断する。[28]

予防[edit]

A black and white photograph of people filling in a ditch with standing water
溜まり水の分散に励む1920年代の写真
このようにして蚊の個体数を減らしていた

デングウイルスには、認可されたワクチンがない。[1] 予防は、ウイルスを媒介する蚊に刺されないように制御し、身を守ることである。[15][29] 世界保健機構は、次の5つで構成される総合的媒介動物制御プログラムを奨励している。(1) 公衆衛生機関を確実に強化するための提唱、社会的動員と法律の制定 (2) 衛生と他の部門(官民)との連携 (3) 資源を最大限に活用した疾患制御への統合的な取り組み (4) 適切な介入を対象とするための根拠ある意思決定 (5) 現地の状況に対して適切に対応するための能力向上[15]

ネッタイシマカを制御するための主な方法は、その生息地を排除することである。[15] この方法として、水の入った容器を空にしたり、蚊の生息地に殺虫剤生物防除剤を撒く方法が挙げられるが、[15]  リン酸エステルピレスロイドの殺虫剤を散布しても効果はないと考えられている。[3] また殺虫剤は、健康にマイナスの影響を与える懸念があり、防除剤は運搬がかなり困難なため、環境改善を通じて水の溜まり場を減らすことが、制御方法として最も好ましい。[15] 個人対策としては、皮膚を完全に覆う服を着用したり、休息時に蚊帳を使用し、防虫剤ディート(DEET)が最も効果的である)を利用して、蚊に刺されないようにする。 [17]

管理[edit]

デング熱に対する特別な治療法はない。[1] 治療は症状によって異なり、自宅で経口補水療法を行いながら経過を見る場合から、 入院して静脈内点滴輸血を投与する場合まで様々である。[30] 入院の決定は一般的に、上記の表にある「警戒兆候」の有無、特にこれらの既往症の有無に基づき判断される。[5]

通常点滴は、1~2日間だけ必要となる。[30] 輸液の速度は、0.5~1 mL/kg/hrの尿量に滴定され、バイタルサインの安定やへマトクリット値の常態が保たれる。[5]  経鼻挿管筋肉内注射そして動脈穿刺などの侵襲的な医療処置は、出血のリスクがあるため避けられる。 [5] 発熱と不快感を抑えるためにパラセタモール(アセトアミノフェン)が使用され、イブプロフェンアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、出血のリスクをさらに増加させる可能性があるため回避される。[30] ヘマトクリット値が減少 し、不安定なバイタルサインが見られる場合、ヘモグロビン濃度が所定の「輸血トリガー」値まで減少するのを待つのではなく、早急に輸血が開始される。[31] 輸血には、濃厚赤血球全血が奨励され、 血小板新鮮凍結血漿は、通常薦められていない。[31]

回復期で、静脈内点滴は水分過負荷状態を避けるため廃止されている。[5] 水分過負荷が起こり、バイタルサインが安定している場合、それ以上水分が増加するのを避けることが、何より必要となるからである。[31] 危機的な状態以外の場合は、循環から余分な水分を除去するために、フロセミドなどの ループ利尿剤が使用される。 [31]

疫学[edit]

World map showing the countries where the Aedes mosquito is found, as well as those where Aedes and dengue have been reported
Dengue distribution in 2006.
デング熱の分布(2006年時点)
: デング熱の流行地域とネッタイシマカの生息域
: ネッタイシマカの生息域のみ

こちらもご覧下さい: デング熱の流行

デング熱にかかった人は、ほとんどの場合、問題なく順調に回復する。[24] 治療せずに死亡に至る割合は1~5%で、[5] 適切な治療を行えば、その割合は1%以下に減少する。[24] しかし、重度の疾患の場合、死亡率は26%に及ぶ。[5] デング熱は、110ヶ国以上で流行している。 [5] 世界中で毎年5,000万から1億人が感染していて、そのうち50万人が入院し、[1] およそ12,500~25,000人が死亡している。[6][32]

ウイルス性疾患は、節足動物によって媒介されるものが最も一般的で、[13] デング熱は、100万人当たり1600 障害調整生命年疾病負荷 と推定され、これは、結核などの他の小児病や熱帯病と類似している。[14] 熱帯病のひとつであるデング熱は、マラリアに次ぎ2番目に重要視されていて、[5] 世界保健機構は、デング熱を16ある顧みられない病気のひとつとしている。[33]

デング熱の発生率は、1960~2010年の間で30倍に増加した。[34] これは、都市化、人口増加、海外旅行の増加、地球温暖化が原因と考えられる。[1] 地理的分布でいうと、アジア太平洋の流行地域に住んでいる人々は合計25億人で、そのうちの70%が赤道付近に住んでいる。[34] アメリカ合衆国で流行地域から発熱を伴い帰国した人のうち、デング熱に感染した割合は2.9~8.0%であり、[17] これは、この病種として診断される疾患のうち、マラリアに次いで2番目に多い。[9]

2003年までデング熱は、潜在的なバイオテロ媒介物として分類されていたが、その後の報告でこの分類から削除された。伝染があまりに難しく、出血熱を引き起こす割合が比較的わずかであると判断されたためだ。[35]

多くのアルボウイルスと同様にデングウイルスは、好ましい吸血媒介動物や脊椎動物宿主の周りに自然と集まる。ウイルスは、メスのヤブカ(ネッタイシマカ以外の種)から、その子孫や下等霊長類へと伝播することで、東南アジアやアフリカの森林に留まる。ウイルスがいる農村部では、ネッタイシマカや ヒトスジシマカなどその他のヤブカの種によって、ウイルスがヒトへと伝播する。都市部では、非常に人馴れしたネッタイシマカによって、主にウイルスがヒトへと伝播する。下等霊長類やヒトが感染した場合、デングウイルスの循環数は大幅に増加する。これを、遺伝子増幅と呼ぶ。[36] ヒトの感染症には、都市型サイクルが最も影響していて、デング熱感染症は、主に町や都市に限られている。[37] ここ数十年で、流行地域の村、町、都市が拡大し、ヒトの移動が増加したことによって、ウイルスの流行や循環数が増え続けている。デング熱は、かつて東南アジアに限定されていたが、現在は中国南部、太平洋やアメリカ諸国に広まり、[37] さらにヨーロッパにまで脅威をもたらす可能性がある。[3]

各地のケース[edit]

Template:出典の明記

日本での流行[edit]

日本でも第二次世界大戦中、戦地から持ち帰られたウイルスが、日本にも生息するヒトスジシマカによって媒介され、長崎市、佐世保市、広島市、神戸市、大阪市など西日本で流行し20万人が発病したことがある。長崎での流行は「日本医学及び健康保険」3306号,2285-2286(1942年)に「デング熱の研究(第1報)」として堀田進らが報告している。当時の長崎のデング熱患者から堀田らによってデングウイルスが分離されたことも、「日本医学(Nippon Igaku)」3379号,629-633(1944年)に報告されている。その後、日本国内での流行は無いが、海外からの輸入症例(海外で感染してデング熱を発症する症例)は、毎年100例前後(2010年は245症例)報告されている。

東アジアでの発症例[edit]

かつては東南アジアのみで発症とされてきた風土病であるという説がある。しかし、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によれば、記録されている中で、最初の流行は、1779年から1780年にかけて、アジア、アフリカ北アメリカで起こったとされている。また、少なくとも、1922年(大正11年)頃は、台湾や東南アジアで、たびたび、流行していた。例えば、1915年(大正4年)5月~10月に、台湾全土で流行した。もっとも、台湾軍(日本軍)内では、141名(治療日数:1369日)と、一般住民と比較して、比較的少数の罹患だった。また、東南アジアなどの熱帯地方に熱帯地方以外の居住者が転居すると、大多数が本病に罹患する、と当時の台湾に赴任する軍医向けの医学書に書かれていた。中華人民共和国南部の温暖な一部の地域や台湾(中華民国)での感染が報告されている。また最近では2007年10月、台湾(中華民国)南部の台南市において511人の感染が報告されたほか、2010年9月には、フィリピンマレーシアシンガポールラオスなどで、それぞれ数万人規模の感染が報告され、拡大の恐れが出ている。

これら東アジア諸国での発症の原因の一つには地球温暖化が考えられているが、台湾南部では清朝統治時代にもマラリアとともにデング熱は発生しているので、台湾に関しては気候が一部熱帯気候であることも大きい発生誘因である。

ハワイ[edit]

ハワイでは1950年代にネッタイシマカが根絶されてデング熱も撲滅されたと思われていたが、2001年9月からマウイ島で、タヒチから移入されたデング熱がヒトスジシマカによる流行を起こし、100人あまりが感染した。運悪くアメリカ同時多発テロによる航空規制と重なり、本土のCDCへのサンプル移送が妨げられるなどの問題が起こった。またテロの影響とあわせ、島の観光産業は大きな痛手を受けた。

ハワイの有名サーファー アンディアイアンズ(32)が感染して11月2日に亡くなった[38]

カンボジア[edit]

カンボジア国内においては、内陸部に少なく、海岸沿いでの感染が多いようである。しかし、2007年雨季(カンボジアでは大体4月末から10月末)にはアンコール遺跡観光拠点の町シェムリアプで主に子どもを中心として流行が認められた。シェムリアプは急速に都市化しており排水事情がそれに比して整備されていないため、蚊の発生が多く、今後も流行には注意が必要である。

歴史[edit]

デング熱と見られる症例について最初に記録されたのは、晋王朝 (西暦265~420年 )時代に書かれた中国の医学百科事典で、デング熱に関連する飛ぶ虫について「水毒」と言及している。[39][40] 17世紀に、デング熱の流行について説明されたが、もっともな報告が最初に発表されたのは、1779~1780年のことである。この時、アジア、アフリカ、北米で大流行していた。[40] それ以降1940年までは、流行はあまり見られなかった。[40]

1906年になると、デング熱がヤブカによって媒介されることが確認され、1907年には、黄熱病に次いで2番目に早く、ウイルスが原因の疾患であると発表された。[41] その後、 ジョン・バートン・クレランド(John Burton Cleland)ジョゼフ・フランクリン・サイラー(Joseph Franklin Siler)によってさらに調査が進められ、デング熱の伝染に関する基本的な理解が確立された。[41]

第二次世界大戦中や戦後になると、デング熱は著しく広まり、生態に混乱を来たしている。これと同じ流れで、デング熱の異なる血清型が新しい地域に普及し、デング出血熱が出現した。1953年に、デング熱の重症型が初めてフィリピンで報告された。1970年代になると乳幼児死亡率を引き上げる要因となり、太平洋地域やアメリカ大陸に現れた。[40] さらに1981年には、デング出血熱やデングショック症候群が、初めて中南米で確認された。その数年前には、DENV-1に感染した人がDENV-2 に罹病していた。[12]

語源[edit]

「デング(dengue)」の語源は明らかではないが、悪霊によって引き起こされる病気を意味をするスワヒリ語Ka-dinga pepo」に由来するという一説がある。[39] また、スワヒリ語「dinga」は、えり好みする、注意深いという意味のスペイン語「dengue」が語源で、デング熱から来る激しい関節痛に苦しむ人が歩く様子を描写したとも言われている。[42] しかし、スペイン語「dengue」は、発音が似ているスワヒリ語「dinga」から由来したという説もある。[39] デング熱に苦しんでいた西インド諸島の奴隷たちが、気取った(dandy)姿勢や歩き方をしていたことから、「ダンディ熱(dandy fever)」とも呼ばれるようになった。[43][44]

「骨に激しい痛みを伴う発熱(break-bone fever)」という用語が初めて使われたのは1789年のことで、医師だったアメリカ合衆国建国の父 ベンジャミン・ラッシュ(Benjamin Rush)が、1780年フィラデルフィアで起きた流行を記述した報告書の中で使用した。 その報告書の中で彼は、より正式な用語「胆汁性寛解型発熱(bilious remitting fever)」を主に用いている。[35][45] デング熱という用語が一般的に使われるようになったのは、1828年以降のことである。[44] その他、過去に使用された用語に「激しい発熱(breakheart fever)」や「ラ・デング(la dengue)」がある。[44] 重度の疾患を示す用語には、「感染性血小板減少性紫斑病(infectious thrombocytopenic purpura)」や「フィリピン出血熱」、「タイ出血熱」、「シンガポール出血熱」がある。[44]

研究[edit]

Two men emptying a bag with fish into standing water; the fish eat the mosquito larvae
媒介動物制御の一環として、グッピー(P.reticulata)稚魚をブラジル、ブラジリア地区にあるラーゴ・ノルテ(Lago Norte)ため池に放つ公衆衛生担当者

デング熱の予防及び治療のための研究は、様々な手段を用いて、媒介動物の制御、[46] ワクチンや抗ウイルス薬の開発に尽力している。[29]

媒介動物の制御では、蚊の生態数を減少するために新しい方法が用いられ、中にはグッピー(Poecilia reticulata)カイアシ類を水中に放し、蚊の幼虫を食べさせることで、成功しているのものある。[46] 蚊の集団をボルバキア属の細菌に感染させる試みも続けられ、こうして、蚊の数を減らし、デングウイルスに抵抗している。[7]

また、2011年にはマレーシア政府が、2012年にはブラジル政府が、デング熱対策として遺伝子組換え技術により致死性遺伝子を組み込んだオス蚊を生産、放出し、蚊の駆除に乗り出した[47]

4つの血清型すべてに効くデングワクチンの開発プログラムも進行中である。[29] しかし、ワクチンの使用によって、抗体依存性感染増強(ADE)が起こり、重度の疾患リスクを高める可能性があるという懸念もある。[48] 理想的なワクチンは、安全で、1~2回の注射で効果があり、すべての血清型を網羅し、ADEを引き起こさず、簡単に輸送や保管ができ、手ごろに入手できて費用対効果があるものである。[48] 2009年時点で、数多くのワクチンのテストが実施されてきた。[14][35][48] 2015年までに最初の製品の市販化を目指している。[29]

ヤブカ が広まるのを制御したり、デング熱のためのワクチンを開発する試みとは別に、抗ウイルス薬の開発努力も進行中で、将来的にデング熱の治療や重度の合併症の防止に使用されるだろう。[49][50] ウイルスタンパク質の構造を発見したことは、有効な薬の開発に役立つ。[50] また、根拠に基づいた目標がいくつかある。第一に、ウイルスRNA依存性 RNAポリメラーゼ (コードNS5)を阻害するための取り組みである。NS5は、ヌクレオシド類似体でウイルスの遺伝物質をコピーする。第二に、ウイルスプロテアーゼ(コードNS3)のための特定抑制物質の開発である。NS3は、ウイルスタンパク質を結合する[51] 最後に、侵入阻害剤の開発である。これにより、ウイルスが細胞に侵入するのを防いだり、 ウイルス複製に必要な5′ キャップ形成過程を抑制する。[49]

出典[edit]

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参考文献[edit]

外部リンク[edit]


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